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 バルトの楽園
 今日、映画「バルトの楽園」を観てきました。(この作品は以前にここで紹介した手前、言いにくいのですが)正直言って、あまり良いと思いませんでした。いつものように映画を観てからであれば、お薦めしなかったと思います。
 映画は、史実に基づき、それなりにきちんと作ってあるのですが、第九の日本初演事情というドキュメンタリー性もそれなり、ドラマとしてもそれなり、音楽映画としてもそれなりで、「それなり」のレベルを越えていないのです。
 特にがっかりさせられたのは、映画の中での演奏シーンの扱いです。音楽は別録音で、役者が音に合わせて演奏する真似をしているだけでした。音楽を題材とした映画なので、演奏シーンは大切にしてほしかったと思います。映画「スウィング・ガールズ」では、すべて役者本人たちが実際に演奏して撮影しており、そのため演奏シーンは非常に臨場感溢れる迫力ある画面になっていました。スウィング・ガールズのキャストは、映画のクランクイン前に3ヶ月以上の特訓を受け、自分の楽器をマスターしてから撮影に入ったそうです。第九の場合はオーケストラですから、そこまでしろとは言いませんが、オケのメンバーのはずなのに、いかにも楽器の扱いに慣れていないと分かる演奏シーンは許せません。
 第九初演にまつわる人間ドラマとして観ても、やはり「それなり」以上にはなりません。登場人物が善人ばかりなのです。登場人物がみな善人でも、それがコメディーやほのぼの癒し系のお話ならいいのですが、善人が善人同士で感動のドラマを展開されると辟易とします。感動を強要されているようで、私は引いてしまいました。
 あまり作品の悪口は書きたくないし、今までもそうしてきたのですが、今回は期待していただけに反動で失望も大きかったのです。お許しください。