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仙台オペラ協会本公演「花言葉」 (2006年9月2日)
 オペラ協会本公演「花言葉」の初日の舞台を観てきました。初めて見る「花言葉」というオペラであり、初めて聴く R.ロッセリーニという作曲家の音楽でした。初めてづくしのオペラですが、作品としてなかなか出来のいい良質のオペラだという印象を受けました。生きること、愛すること、そして老いることという人生の根本に関わる重いテーマを扱った哲学的な台本。現代の作曲家ではあるけれど、イタリアオペラの伝統的な作風を受け継いだロッセリーニの美しいメロディーと耳になじむ和声、そして人間の声の魅力を心得たソロ、デュエット、アンサンブルの数々。私としては十分に楽しむことが出来ました。(今日の歌い手の中では、家政婦役の遠藤晶子と叔母役の齋藤翠の熱演・熱唱が光っていました。)
 しかし、舞台としての出来がいいということと、オペラの興行としてお客さんを満足させられるかということとはまた別です。「花言葉」は作品として良質のオペラだと思うし、今日の演奏も悪くなかったと思うのですが、お客さんの反応はいまひとつという感じだったし、何よりも県民会館にかなり空席が目立っていました。
 「カルメン」「ボエーム」「バタフライ」「椿姫」(など有名路線)しかお客が入らないという(日本の)オペラに対する大きな挑戦だと音楽監督の星出先生はプログラムに書いていました。星出先生の熱意は分かりますが、残念ながら仙台のオペラ事情はまだそこまで期が熟していないのではないかと思いました。
 私も、今日のオペラを十分楽しむことができたというのは嘘ではありませんが、どうせなら今日のようなスッキリしない小難しいラストを迎えるオペラよりは(喜劇であれ悲劇であれ)ドラマの余韻に浸りながら夢見心地で帰途につくようなオペラがいいなあと思いつつ県民会館を後にしたというのも事実です。(私のオペラ事情もまだ期が熟していないようです。)