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エレミアの哀歌について


 エレミアの哀歌は、カトリックの典礼で復活祭直前の3日間(聖なる過越の3日間)、つまりキリストの受難の金曜日を含む木・金・土曜日の各朝課(深夜から朝にかけてのミサ)の際に朗読されたり歌われたりする、旧約聖書の中の一節です。
 旧約聖書のエレミアの哀歌は、預言者エレミアが、紀元前597年の新バビロニアによるエルサレム侵攻と、それに続くイスラエル人のバビロン捕囚を悲しんで綴った詩であると考えられてその名が付けられました。しかし、現在ではエレミアの作であるということは否定されています。
 聖なる過越の3日間という非常に重要な時期に歌われることと、その悲痛な内容から、エレミアの哀歌は単旋律聖歌の時代から特別扱いされていましたし、ルネサンスからバロックにかけては、たくさんの作曲家がこれをテキストとして名曲を残しました。
 オルランドゥス・ラッススは、4声と5声、2つのエレミアの哀歌を作曲しています。今回取り上げるのは5声のエレミアの哀歌で、聖土曜日に歌われる3曲です。
                                                  
 

オルランドゥス・ラッススについて


 オルランドゥス・ラッススは1532年、ルネサンス期を通じて優れた音楽家を輩出したフランス・フランドル地方のエノーのモンスに生まれました。1545年頃、フェッランテ・ゴンツァーガに(おそらく歌手として)仕えてイタリアに移り、その後、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂の楽長などを経て、1556年、バイエルン公アルブレヒト5世の招聘でミュンヘンの宮廷の礼拝堂楽団員になりました。1563年には楽長となり、それ以降、没するまで約30年にわたってその地位を保持しました。
 ラッススは、16世紀の最も多作で多才な作曲家の一人であり、その業績は当時からヨーロッパでよく知られ、広く称賛されていました。


( 2007.9.22 仙台放送合唱団 第46回定期演奏会 プログラムより )