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アヴェ・マリアについて                                  2011. 1. 18



Ave Maria, gratia plena,

Dominus tecum,

Benedicta tu in mulieribus,

Et benedictus fructus ventris tui, Jesus.

Sancta Maria, Mater Dei,

Ora pro nobis peccatoribus,

nunc et in hora mortis nostrae.

Amen


おめでとう マリア、恵みに満ちた方よ、

主はあなたとともにいます。

女たちの中からあなたが祝福を受け、

胎内の御子イエスも祝福されます。

聖なるマリア、神の御母よ、

祈りたまえ、罪人であるわれらのために、

今も、そしてわれらの死の時も。

アーメン。



 おそらく、アヴェ・マリアは世界中で最も数多く作曲さているテキストではないかと思います。古今東西のたくさんの作曲家がアヴェ・マリアを作曲しています。今回の演奏会で取り上げた作曲家のほかにも、ジョスカン・デ・プレ、パレストリーナ、モンテヴェルディー、モーツァルト、ロッシーニ、メンデルスゾーン、ブルックナーなど有名な作曲家だけでも枚挙に暇がありません。また、アヴェ・マリアには、名曲と呼ばれるのにふさわしい美しい曲が多いと感じるのは私だけではないと思います。なぜ、作曲家はそんなにアヴェ・マリアに心血を注ぐのでしょうか。
 作曲家はこのテキストに触発され、自分の才能の全てを結集して女性や母性の象徴であるマリアを讃える音楽を作曲したいという欲求に駆られるのだと思います。そして、このテキストに、自分の創り得る最も美しい音楽を付けたいと考えるのでしょう。誤解を恐れずに言えば、アヴェ・マリアは、作曲家の思いが込められた、永遠の憧れの女性マリアへのラブソングだと私は思うのです。

アルカデルトJacques Arcadelt 1505? 1568)は、フランドル出身と考えられていますが、詳しいことは分かっていません。ヴェネツィアで活躍し、ローマ教皇庁の一員にもなっていますが、それを辞して、後半生はフランスで国王の礼拝堂などに勤めていたようです。じつは、アルカデルト自身はアヴェ・マリアを作曲していません。アルカデルトのアヴェ・マリアとして有名なこの曲は、19世紀の作曲家L.ディーチュが、アルカデルトが作曲した3声のシャンソンの旋律をもとに4声に編曲し、アヴェ・マリアのテキストを当てはめたものです。

ヴェルディGiuseppe Verdi 1813 1901)は、オペラの作曲家として知られていますが、レクイエムをはじめとして、宗教的な合唱曲も作曲しています。1889年に作曲されたアヴェ・マリアは、副題が「混声4部に和声付けされた謎の音階」となっています。その後改定されて、聖母マリアの賛歌、テ・デウム、スタバト・マテルなどとともに「4つの聖歌」として出版されました。

ストラヴィンスキーIgor Stravinsky 1882 1971)は、生まれてすぐにロシア正教会の洗礼を受けましたが、その後信仰を捨てていました。1926年にロシア正教会に再入会し、それをきっかけとしてスラブ語による宗教的合唱曲を作曲するようになりました。1934年に、やはりスラブ語で聖母への賛歌「天使祝詞」を作曲しましたが、15年後の1949年にラテン語の歌詞に書き換えられました。それがこのアヴェ・マリアです。

チョピAnbroz  Copi 1973    )は、スロベニアの若手作曲家です。首都のリュブリャーナ音楽アカデミーで作曲を学び、1996年に卒業しました。現在は、作曲家、合唱指揮者として活動するほか、音楽理論の教師として教鞭をとっています。アヴェ・マリアは、1999年に出版された「2つの聖歌」の第1曲となっています。

ヴィクトリアThomas Luis de Victoria 1548 1611)は、ルネサンス期スペイン最高の作曲家であり、スペインのパレストリーナとも称されています。ヴィクトリアは、生涯を通じてラテン語による宗教曲しか作曲しませんでした。ヴィクトリアのアヴェ・マリアは、8声(2重合唱)でオルガン付きのものと、今回演奏する4声でア・カペラのものの2つが知られています。




( 2011.2.5 仙台放送合唱団 第49回定期演奏会 プログラムより )