アヴェ・マリアについて 2011. 1. 18 |
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Ave Maria, gratia plena, |
おめでとう マリア、恵みに満ちた方よ、 |
おそらく、アヴェ・マリアは世界中で最も数多く作曲さているテキストではないかと思います。古今東西のたくさんの作曲家がアヴェ・マリアを作曲しています。今回の演奏会で取り上げた作曲家のほかにも、ジョスカン・デ・プレ、パレストリーナ、モンテヴェルディー、モーツァルト、ロッシーニ、メンデルスゾーン、ブルックナーなど有名な作曲家だけでも枚挙に暇がありません。また、アヴェ・マリアには、名曲と呼ばれるのにふさわしい美しい曲が多いと感じるのは私だけではないと思います。なぜ、作曲家はそんなにアヴェ・マリアに心血を注ぐのでしょうか。 アルカデルト(Jacques Arcadelt 1505? 〜 1568)は、フランドル出身と考えられていますが、詳しいことは分かっていません。ヴェネツィアで活躍し、ローマ教皇庁の一員にもなっていますが、それを辞して、後半生はフランスで国王の礼拝堂などに勤めていたようです。じつは、アルカデルト自身はアヴェ・マリアを作曲していません。アルカデルトのアヴェ・マリアとして有名なこの曲は、19世紀の作曲家L.ディーチュが、アルカデルトが作曲した3声のシャンソンの旋律をもとに4声に編曲し、アヴェ・マリアのテキストを当てはめたものです。 ヴェルディ(Giuseppe Verdi 1813 〜 1901)は、オペラの作曲家として知られていますが、レクイエムをはじめとして、宗教的な合唱曲も作曲しています。1889年に作曲されたアヴェ・マリアは、副題が「混声4部に和声付けされた謎の音階」となっています。その後改定されて、聖母マリアの賛歌、テ・デウム、スタバト・マテルなどとともに「4つの聖歌」として出版されました。 ストラヴィンスキー(Igor
Stravinsky 1882 〜 1971)は、生まれてすぐにロシア正教会の洗礼を受けましたが、その後信仰を捨てていました。1926年にロシア正教会に再入会し、それをきっかけとしてスラブ語による宗教的合唱曲を作曲するようになりました。1934年に、やはりスラブ語で聖母への賛歌「天使祝詞」を作曲しましたが、15年後の1949年にラテン語の歌詞に書き換えられました。それがこのアヴェ・マリアです。 ヴィクトリア(Thomas Luis de Victoria 1548 〜 1611)は、ルネサンス期スペイン最高の作曲家であり、スペインのパレストリーナとも称されています。ヴィクトリアは、生涯を通じてラテン語による宗教曲しか作曲しませんでした。ヴィクトリアのアヴェ・マリアは、8声(2重合唱)でオルガン付きのものと、今回演奏する4声でア・カペラのものの2つが知られています。 |
( 2011.2.5 仙台放送合唱団 第49回定期演奏会 プログラムより ) |