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もの思いの合間に

〜 「天文学的な数字」の執筆裏話 〜

 天文学的な数字の元ネタ                                      2006. 6.25
 20代遡ると祖先の数が100万人を上回るという話は私のオリジナルではありません。ある研修会で聞いた話です。
 それは1年半ほど前の国語科授業研修会で、その時の講師・野口芳宏先生が話してくれたことのダイジェストです。野口先生は、研修会の教養講座「教育の根本思想今昔」という講演の中でその話を使って、一人の人間の命の尊さについて語りました。
 私はその話を聞いて感動しました。私という一人の人間は、その後ろに数え切れないほどたくさんの祖先の命を背負って生きているんだ、たくさんの祖先の夢や希望や願いを引き継いで生きているんだということが、「20代で100万人」という数字から実感できました。そうしたら、急に自分の命がとてつもなく貴重なものに思えてきました。また、今、生きている人たち全員がそういう無数の祖先の命を引き継いでいるのだと思うと、そのとき会場にいた受講者一人一人の顔も輝いているように感じました。
 いつか受け持ちの子どもたちや保護者にもこの話をしてあげたいと思っていましたが、その機会がないまま過ぎてきました。それが、今回学校だよりのエッセイという形で多くの方に読んでもらう機会が与えられ、私としてもうれしく思っています。

 本当は、七夕が近いということをきっかけに、何気なく見上げている夜空の星一つ一つに、ものすごく壮大な時間と空間のドラマが秘められているということも話題にしたかったのです。
 「夜空に輝く星の光は、何十年、何百年、時には何万年もかかって地球に届いている。だから、現在私たちが見ている星の光は、何十年、何百年、何万年前のもので、もしかすると現在、その星は消え去ってもはや存在していないかもしれない。しかし、それが地球で確認できるのはやはり何十年、何百年、何万年も後のことになる。」
 初めてこの話を聞いたとき、そのスケールの大きさに身震いするほど感動しました。同時に、宇宙の時間と空間の壮大さの前に、それに比べてあまりにも小さな自分の存在が消し飛んでしまいそうな気がしました。(非常に感動したのに、いつどこで誰に聞いたのか覚えていません。)

 七夕を軸にして、この二つの天文学的な数字の話題で一つのエッセイを書こうと思ったのですが、何せ250〜300字という字数制限があります。両方を絡めた文章ではとても収まりません。そこで、どうしても書きたかった「20代で100万人」の方を残し、「夜空に輝く星の光」についてはカットせざるを得ませんでした。

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