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もの思いの合間に

〜 「あの歌この歌・好き嫌い」の執筆裏話 〜

 思い込みは恐ろしい                                        2006.11.14
 合唱団の練習の休憩時間、テノールの(某高校で国語を教えていらっしゃる)T先生に、
「里の秋は、いつごろ作られた歌なんですか?」
と質問されました。私は咄嗟に
「ええと、ラジオで放送されたのは戦後ですが、作詩されたのは確か昭和16年だったと思います。」
と答えました。T先生は、
「だったら復員の歌と考えて間違いないだろうね。もし、太平洋戦争以前に作られた歌だとしたら、単に遠洋航海をしている船乗りの家族の歌とも考えられると思ってね。」
と言うのです。確かに、歌詞だけから考えるとそのような解釈も成り立ちます。私は「里の秋」の3番を聞いた途端に復員の歌だと思い込んでしまいましたが、冷静に歌詞だけを読むと、全く違う解釈も成り立つことが分かり驚きました。今回このことで、「人間は一度思い込んでしまうと、物事を別の側面から見ることが出来なくなってしまう」ということを身をもって実感しました。
 「里の秋」は復員を待つ母子の歌で間違いありません。CD を聞いて「里の秋」に3番があることを知ってから、私は楽譜に当たってみました。ドレミ楽譜出版の「日本童謡唱歌全集」(足羽 章 編)にはちゃんと3番まで歌詞が載っており、曲についての解説も付けられていました。(以下はその解説です。)

 昭和20年12月24日、NHKラジオ「外地引揚同胞の午後」という番組で、川田正子さんの歌によって放送され、その後「復員だより」のテーマ曲になりました。太平洋戦争が勃発した昭和16年12月に、出征兵士の心情を思い、泣きながら書かれた詩は「星月夜」と題されましたが、放送に際して現在のものに改められました。

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