〜もの思いは放課後だけで終わりませんでした〜
バランス 2005. 7. 8 |
最近やっと弾けるようになってきたばかりですが、自分で弾いた「亜麻色の髪の乙女」は、とても風通しが悪く暑苦しい音に聞こえます。厚ぼったくてスッキリしない音、あるいは鈍重で野暮ったい音と言ってもいいかもしれません。理由は分かっています。和音のバランスが悪いのです。 フランソワが弾いたものも、ミケランジェリが弾いたものも(多分、CD化されているようなピアニストなら誰が弾いたものでも)メロディーがくっきりと聞こえ、それを支える和音はじゃまにならないように控えめに響きます。ところが私が弾くと、メロディーは和音の中に埋没して浮き立ってきません。 私が弾いても、左手が和音を奏でて、右手で単音のメロディーを弾くところはまだ何とかなります。左手を極力抑えて、右手のメロディーを強めに弾けばそれなりにメロディーが聞こえるようになります。 問題は右手も左手も和音を弾いていて、その中の一つの音がメロディーになっているときです。(だいたい右手の小指ないし薬指で弾く音がメロディーにあたっています。)理屈で言えばメロディーの音だけ強めに弾いて他の音を抑えればいいわけです。ところが、同じ右手の中で、力の入りにくい小指や薬指で弾く音を強めにして、逆に力の入りやすい人差し指や親指で弾く音を抑えるというのは、私にとっとは至難の業です。親指や人指し指の音を抑えようとすると、打鍵が弱すぎて音が鳴らなかったりします。また、それぞれの指の力の入れ具合い変えると、同時に鳴ってほしい和音がばらけたりしてしまいます。一つの手の中で指ごとに強さを変えて和音を弾くというのは本当に難しいものです。 それに比べると簡単なはずの左手で和音を奏でて、その上に右手でメロディーを弾く場合も、私にはまだ解決できていない問題があります。ピアノの構造上、低い音の方が強く豊かに響き、高い音は同じ強さで打鍵しても、貧弱に聞こえます。そのため左手はかなり抑えて、右手はかなり強めに弾かなければなりません。けれども右手で強めにメロディーを弾こうとすると音色が硬くなってしまいます。また、強く弾こうとすると音のつなぎがぎこちなくなったり、音の粒が揃わなくなったりして、メロディーがレガートにならないのです。 本物のピアニストは、10本の指の力のバランスを調整して、メロディーやオブリガートを浮き立たせ、和音は控えめに鳴らすという作業を、一つ一つの音符ごとに瞬時に行うという凄いことをやっているのです。同じ「亜麻色の髪の乙女」を弾いていても、私が弾くのとは天と地ほどの違いがあるわけです。 ピアノを弾くということは奥が深いですね。どんな曲でも、そうそう簡単に「弾けた」なんて言えるものではありません。 |
ピアノの名曲 >> |