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もの思いの帰り道

〜もの思いは放課後だけで終わりませんでした〜

ファルセット                                                2006. 9. 2
 カホウソウ・コンソートで、私はカウンター・テナーを担当していました。カウンター・テナーというのは、ファルセット(裏声)を使って、普通ならば女声の歌う音域を担当する歌い手のことです。(米良美一が「もののけ姫」で有名になるまで、カウンター・テナーは一般的にほとんど知られていなかったのですが、ルネサンス期の歌を歌うアンサンブルではごく普通に使われていました。)

 私は子どもの頃から高い声がよく出ました。(中学1年の校内合唱コンクールのときは変声前だったので、女子に混じってソプラノ のパートを歌いました。)ボーイ・ソプラノのような高音は声変わりしてからもファルセットとして残りました。ただ、実声とファルセットでは声質や出せる音量にずいぶん差があったので、合唱団で普通の合唱曲を歌うときにファルセットを実声の延長として使うことは出来ませんでした。それが、ルネサンス期のアンサンブルを聴くようになってカウンター・テナーの存在を知り、ファルセットの使い道を見つけたというわけです。
 大学時代、私のファルセットは絶好調でした。普通の合唱曲でソプラノの歌う音域ならば楽に出すことが出来ました。実声で高い音を歌うときは腹筋とか背筋とか(いわゆる支え)をかなりしっかりがんばらないと歌えないものですが、ファルセットならば何のストレスもなくスルスルと高音が出たのです。最盛期にはモーツァルトのオペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」が実音で歌えました。

 小学校に勤めて、職業柄、声を酷使することが多くなり、声帯が鍛えられて厚くなってしまったので、ファルセットの高音域は出にくくなりました。さすがにもう「夜の女王のアリア」は歌えません。でも、今でも小学校の教材のような歌ならばファルセットを使って子どもたちと同じ高さで歌うことが出来ます。
 低学年の子どもたちに新しい歌を教えるときは、メロディーをピアノやオルガンで弾くよりも、歌ってあげたほうがスッと浸透するので、私は自分の声で歌って教えるようにしています。ところが、私が実声で歌うと、それを聴いて無意識にオクターブ下の低い声で歌おうとする耳の良い子が何人かいたりします。だから私は初めての歌を歌って聞かせるときはファルセットを使って子どもたちと同じ音で歌うようにしています。
 私のファルセットは、今でもとても役に立っています。

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