今日、板橋先生の演奏会「板橋 健 独唱会 〜声による表現の可能性を求めて〜 」を聴いてきました。二部構成で前半がヘンデル、シューマン、R.シュトラウス、ヴォルフなどの歌曲、後半が日本の歌曲というプログラムでした。
正直言って聴くのが辛い演奏会でした。私が大学で初めて声楽の授業を受けたのが板橋先生でした。だから、先生のお人柄はよく知っているつもりです。先生の音楽に取り組む姿勢は誠実で、嘘やハッタリがありません。また、常に練習・研究を怠らず、研鑽に励んでいらっしゃいます。私も歌を歌う者の端くれですが、板橋先生は声楽家として尊敬できる方だと思っています。でも、私は先生の歌は好きになれないのです。聴いていいなあと思えないのです。
板橋先生の歌い方は子音を発してから声が鳴るまでに時間がかかります。そのため、私には音楽がフレーズとしてつながって聞こえないのです。また、音量は常に控えめで、抑制の効いた声で歌われるので、物足りなさを感じてしまいます。今日はかなり声の調子が悪かったらしく、いつもに増してその傾向が強かったので、歌を歌として楽しんで聴くことができませんでした。
演奏者の人間としての好き嫌いと、実際の演奏の好き嫌いがすっかり乖離してしまって、聴いていて辛いだけでした。
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