もの思いの放課後

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真夏の出来事                                          2005. 8.11
 数年前のことです。職場の飲み会の二次会か何かだったと思いますが、みんなでカラオケに行きました。その店はビルのほぼ最上階にあって、夜景が見えるかなり広い店でした。いわゆるカラオケ・ルームというのではなくて、立派なカラオケ設備のある飲食店(バー?スナック?パブ?どれかはっきりしませんが、その類の店)です。ほかのお客さんはいなかったので、私たちだけの貸切状態でした。
 カラオケに行ったときのお約束みたいなものでしょうか、順番に一人1曲歌うということになりました。私はカラオケがあまり好きではないので、自分のノルマの1曲が終わったら、もうあとは飲んだり話をしたりする方に興味が移っていました。ところがそんな時、突然耳に飛び込んできて、心をググッと引っぱったのがこの曲でした。

 彼の車に乗って 真夏の夜を走り続けた  彼の車に乗って 最果ての町 私は着いた〜

「真夏の出来事」というタイトルでしたが、私は初めて聞く曲でした。初めて聞くはずなのになぜか妙に懐かしい気分になりました。夜になってもまだ熱気の残る夏の空気を切って、オレンジ色っぽい街路灯が続く道を車で走っていく映像まで脳裏に浮かびました。古い記憶が蘇ったような錯覚を起こさせるこの曲はいったい何なんだろうと不思議な気持ちになりました。
 あとで調べてみたら、1971年に平山三紀という歌手が歌ってかなりヒットした曲でした。年代的には私が幼いときに何かの拍子に聞いた可能性がないわけではありません。しかし、30年以上も記憶に残るほど聞き込んだはずがありません。また、曲を聞いたとき脳裏に浮かんだ映像も、私の実際の思い出ではありません。つまり、曲にまつわる思い出が私を懐かしい気分にさせるのではなく、曲そのものが私にそういう不思議な感覚を呼び覚ます魔力のようなものを持っているのだと思います。
 前に調べたときは気に留めませんでしたが(今回よく見たら)、なんと「真夏の出来事」の作曲者は、斉藤由貴の「卒業」・小泉今日子の「夜明けのMEW」を作曲したあの筒美京平だったのです。どうやら筒美京平のつくる曲は、私の心の琴線に触れる何かを持っているようです。(まあ、考えてみれば、私だけでなく多くの人の心に響くからヒット曲になるわけですよね。)
 初めてこの曲を聞いたとき以来、夜になってもムッとした熱気を感じる季節になると、「彼の車に乗って 真夏の夜を走り続けた〜」というフレーズが時々ふっと浮かんできます。

※白石玉貴という歌手がカヴァー曲を歌っているようです。本州では流れませんでしたが北海道では石屋製菓の「白い恋人」の昨年の夏用CMソングとして使われたそうです。


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