今回は、今でも心に残っている 幸せなお正月の思い出のことを書きたいと思います。それは私が小学校に入ったばかりの頃のことです。
その年は暖冬で、雪は全くありませんでした。今でこそ雪のないお正月は珍しくありませんが、当時の岩手県ではめったにないことでした。
元旦は朝から天気がよくて暖かい日になりました。お餅を食べ終わって何することもなくのんびりしていると、(確か 母が言い出したことだと思いますが)元朝参りに行こうということになりました。それで私と母と祖母の3人で、近くの豊隆神社にお参りに行きました。あまりいい日和なので、散歩がてらに八幡神社にもいってみようかということになりました。八幡神社までは歩いて小一時間ほどかかります。お正月でこれと言った用事もないので、3人で静かな元旦の田んぼ道をのんびりと歩いていきました。日差しは暖かく、遠くの町並みの瓦屋根でしょうか、きらきら光って見えました。風もない穏やかな日で、本当にのどかな散歩になりました。普段は仕事で忙しい母や祖母とこんなにゆっくりと散歩したのは初めてでした。
実はこれだけのことなのです。そのとき母や祖母とどんな話をしたのか、もう覚えていませんし、八幡神社にお参りした後のことも記憶にありません。けれども、30年以上経った今でも、幸せなお正月の思い出というと、この散歩のこと、そのとききらきら光っていた町並みの見える風景を思い出すのです。
そのとき、何が幼い私の心の琴線に触れたのか分かりません。こんな小さな出来事が、一番幸せなお正月の思い出になっているのというは、多分に幼い頃へのノスタルジーもあるのだと思います。でも、これだけは確かなことだと思いますが、幸せはお金をかけたり、なにか特別なことをしたりしなくても、日常の中にもあるものです。
私は、家庭の温かさや家族の幸せについて考えるとき、いつもこの散歩のことを思い出します。あのとき私は本当に幸せだったのだと思います。
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