もの思いの放課後

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卒業@                                           2005. 3.22

 3月は卒業の季節です。卒業はさまざまなドラマを生み出します。だからでしょう、卒業について歌った歌はたくさんあります。ずばり「卒業」というタイトルの付いた歌だけでも尾崎豊、松山千春、沢田聖子、渡辺美里、斉藤由貴、菊池桃子などが歌ったものがあり、海援隊の「贈る言葉」や、ユーミン(Hi-Fi Set)の卒業写真、新しいところでは森山直太郎の「さくら」なども卒業に関係する歌と考えていいと思います。
 そういったたくさんの卒業に関係する歌の中で、私が一番好きなのは斉藤由貴の「卒業」です。別に私は斉藤由貴のファンだったわけではなく、彼女が主演した「スケバン刑事」シリーズも見ていなかったし、彼女が歌ったほかの歌も知りません。斉藤由貴が歌ったから好きなのではなく、この曲そのものが好きなのです。
 歌詞は、高校を卒業する女の子が、もっと悲しいときのために涙はとっておきたいと、涙を見せずに卒業していく・・・そういう内容です。メロディーも暗く沈み込むことはなく、ちょっとした寂しさを含みながらも明るくさらっと流れていきます。しかし彼女は、好きだった彼と別々の道を歩み始めることでお互いにだんだん疎遠になり、やがて本当の別れがやってくることを予感しています。涙をとっておくのはそのときのためなのです。そんな本当の理由は誰にも言えず、彼女は涙を見せずに卒業していきます。
 そう思って聴くと、メロディーも和声もとても微妙で、近い将来、胸がつぶれるほどの思いをすることになると分かっていながら、今は微笑んでいるしかない、そんな切ない思いが音になっているように感じられます。
 暖かかったり、寒かったり気候もはっきりしない3月、希望と悲しみ、期待と不安、いろいろな思いが複雑に絡み合い揺れ動く「卒業」の心象を見事に音にした斉藤由貴の「卒業」。私は大好きです。


卒業A                                               2005. 3.26
 斉藤由貴の「卒業」を初めて聴いたのは、歌詞のないインストゥルメンタルのものでした。現代音楽とジャズをやっている知人からもらったカセットテープに入っていたのです。そのカセットテープには、自作の現代曲やシンセサイザーの曲、テレビアニメのテーマソングを遊びで自分なりにアレンジしたものなどがごちゃごちゃと入っていました。その中の1曲だったのですが、そのテープのインデックスには曲名も書かれていなかったので、それが何という曲なのか分からず、その知人の曲かもしれないと思っていました。明るいアップテンポな曲なのに、何か憂いみないなものを含んだメロディーとハーモニーで、その曲が妙に心に残りました。
 それから何年か経って、FMラジオの卒業の歌特集で、なんだか聞き覚えのある曲が流れてきたと思ったら、それがあのテープに入っていた曲でした。曲名は斉藤由貴の「卒業」でした。
 急いでレンタルCD店に行き、斉藤由貴の「卒業」が入ったCDを借りてきました。家でじっくり歌詞とともにこの曲を聞いて、インストゥルメントで聴いたときに感じた憂いみたいなものの理由が分かりました。それと同時にこの曲が大好きになりました。歌詞を知らなくても、歌詞の内容や雰囲気がメロディーやハーモニーから感じとれるのだから、この曲はやはり音楽として優れているのだと思います。
 今回この文章を書くにあたって調べてみたら、「卒業」の作詞は松本隆、作曲は筒美京平でした。えっ、筒美京平といえば、これもまた私の大好きな「夜明けのMEW(ミュー)」(歌:小泉今日子)の作曲者ではないですか!
 「夜明けのMEW(ミュー)」も、夜更かししていたらもう明るくなってきてしまった夏の夜明けのけだるさと、別れの朝の切ない気持ちが、歌詞を聞かなくても伝わってくる名曲です。
 う〜ん、筒美京平、恐るべし。


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