もの思いの放課後

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光のページェント                                         2010.12.23
 今年もまた「SENDAI 光のページェント」が行われています。去年から電飾のLED化が進められて、今年はすべての電飾が LED になったようですが、その整流器から出火して小火騒ぎとなり、一時点灯が見合わされていました。整流器の部品を交換して安全確認を行い、昨日(22日)から点灯を再開しました。
 SENDAI 光のページェントが始まって、今年で25周年です。仙台の冬の風物として、もうすっかり定着した感があります。けれども私は、光のページェントを見るたびに思い出すことがあって、素直に「綺麗だなあ」とか「幻想的でいいなあ」とか感じることが出来ないのです。

 話は25年前にさかのぼります。仙台オペラ協会はその年、創立10年を記念して、初めて新作オペラに取り組もうとしていました。脚本・菅原頑、作曲・岡ア光治の「鳴砂」です。
 公演を控えて、代表の小野先生は超多忙な日々を過ごしていました。当時の仙台オペラ協会は、現在のように演奏部会と事務局が分かれておらず、会員はオペラの練習の合間を縫って、公演に関するすべての事務的な仕事をこなさなければならなかったのです。小野先生も新作オペラの中で「黒い男」という役付きだったのですが、協賛や後援の依頼、プログラム広告の依頼のために奔走していました。特定の大企業から金銭的なバックアップもなく、自主的な活動としてオペラ公演をするためには、それが必要不可欠だったのです。

 ある時(詳しくは覚えていませんが、たぶんオペラの練習の合間か、練習終了後のことだと思います。小野先生は、補助金申請に行ってきたところだったのでしょう。)先生は、めずらしく私たち(大学で先生にお世話になった卒業生で、鳴砂に出演していた3〜4人)に向かって半分独り言のように愚痴をこぼしました。
「申請のために何度も役所に行ってお願いして、やっともらえた補助金が5万円だぞ。オペラ協会は宮城県の芸術選奨も受けているし、いままでオペラの公演を毎年欠かさず10年続けてやってきたんだ。それで5万円か・・・。」
「なのに、光のページェントとかいう街路樹に電球を吊るすイベントには、桁違いの100万円単位で補助金が出るんだ。」
「地域の芸術・文化の振興のためと言って、行政はオペラ公演よりも、電球を吊るすことの方にお金を出しているんだ。」
 どうやら、オペラ協会と光のページェントの補助金の出所が同じだったようです。

 私は学生のときから仙台オペラ協会と関わって、小野先生やオペラ協会会員の人たちが、どれだけ苦労してオペラ公演を開催していたか、間近に見ていました。利益のためでなく(利益どころか、持ち出しまでして)オペラ公演のために、みんな心血を注いでいました。それを10年続けることがどれほど大変なことか・・・
 小野先生から補助金の話を聞いて、「ここの行政は、地道に努力をしていても地味なものより、内容はどうであれ派手で人目を引くもののほうを大事にする、いわゆる『伊達な気質』なんだ」と思いました。
 その年、初めて灯された光のページェントを見ても、私の心は浮き立ちませんでした。


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