もの思いの放課後

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ハーモニカ                                         2005. 6.11
 今週、私の勤める小学校では、おもに1年生の保護者を対象に鍵盤ハーモニカの販売が行われました。ということで、1年生は来週から音楽の時間に鍵盤ハーモニカを使い始めます。
 さて、小学校指導要領の音楽の項では、1・2年生で使用する楽器について「ハーモニカ」という記述になっているので、もちろん普通の(鍵盤でない)ハーモニカを使ってもいいわけです。ところが現在、市内の小学校はすべて、この鍵盤ハーモニカを使って授業をしていて、普通のハーモニカで授業しているという話は聞いたことがありません。
 確かに、鍵盤ハーモニカは普通のハーモニカに比べて、教育楽器としていくつかの優れた点があります。
 まず鍵盤があることで音階が視覚的にとらえられ、分かりやすいことが挙げられます。普通のハーモニカも吹き口は音階の順に並んでいるのですが、口にくわえてしまうと見えませんから、学習し始めの低学年の児童にとっては鍵盤を見ながら演奏できる鍵盤ハーモニカの方がいいでしょう。鍵盤があるということで、アコーディオン、オルガン、ピアノなどほかの鍵盤楽器への発展性もあります。
 また、息によってエクスプレッションがつけやすいということも挙げられます。普通のハーモニカは、音によって呼気と吸気を使い分けなくてはならず、フレージングやエクスプレッションが難しい楽器です。それに比べると鍵盤ハーモニカは、管楽器と同じように呼気だけで演奏するので、フレージングもしやすいし、オルガンやアコーディオンと比べても自分の息によってかなりデリケートなエクスプレッションが可能です。それで現在、小学校では普通のハーモニカよりも鍵盤ハーモニカの方が主流になっているのでしょう。
 では、学校教育の現場ではなくて、一般の音楽界ではどうでしょうか。
 ハーモニカは、ジャズやブルースなどでは立派にソロ楽器としての地位が確立されていますし、ロックやフォークソング、ポップスなどにも広範囲に使われています。ところが、鍵盤ハーモニカにはそういった例が皆無とはいえないものの、ほとんどありません。
 それはやはり、楽器の命とも言える音色が魅力的でないからだと思います。楽器の構造上の問題だということなのですが、他のリード楽器(ハーモニカ、アコーディオン、オルガン)と比べて音が冴えないと言うか、野暮ったいと言うか、下品と言うか、とにかく私は鍵盤ハーモニカの音色に良い印象がありません。小学校の音楽で習うほかの楽器、例えばリコーダーやアコーディオンなどは、子供たちが大人になってからも、いつかもう一度やってみようという気になるかもしれませんが、鍵盤ハーモニカにそんな気が起きるとは思えません。
 小学校ではこれだけ普及しているのに、一般の音楽界ではほとんど相手にされない鍵盤ハーモニカ。楽器として何とも哀れな存在だと感じるのは私だけでしょうか。

 一般に使われている呼び名「ピアニカ」は YAMAHA の登録商標なので、学校現場では使いません。ちなみに、市内小学校でかなりシェアの高いスズキ楽器のものは「メロディオン」、ゼンオンのものは「ピアニー」という登録商標です。学校現場では、上記のように「鍵盤ハーモニカ」、あるいは略して「鍵盤」「鍵ハ」などと呼んでいます。


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