もの思いの放課後

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登録商標@                                            2005. 6.18
 前に「ピアニカ」は登録商標だということを書きましたが、ほかにも登録商標だと気づかずに普通の名詞だと思って使っている例はけっこうあります。
 音楽関係の例では、「エレクトーン」です。これはYAMAHA の登録商標ですが、知らずに電気オルガンはみな「エレクトーン」だと思っている人は多いのではないでしょうか。ちなみに、カワイの電気オルガンは「ドリマトーン」です。(電気オルガンと書いたのにも理由があります。ちょっとあやふやな記憶ですが、確か「電子オルガン」も YAMAHA の登録商標だったはずです。)
 
登録商標に関連して思い出すのは、その昔、紅白歌合戦で山口百恵がプレイバックPartUを歌うことになったときの話です。NHKが、「うちは公共放送だから、歌詞( 緑の中を 走り抜けてく真紅なポルシェ〜)の中に企業名のポルシェが出てくるのはまずい。紅白で歌うときはポルシェの部分を変えて歌うように」と要請し、けっきょく「真紅な車」になったというエピソードです。(※1)
 当時、私は子供ながら「ポルシェがただの車になって何かかっこ悪いなあ」と感じました。また、歌詞を変えてまで紅白に出たいのか? 歌詞を変えるなら出場しない!というくらいの気概はないのか?とも思いました。(※2)
 真紅なポルシェだからこそ、ちょっと気が強くて高ビーな、でも凄くイイ女のイメージが浮かび上がるのであって、真紅な車(国産車を連想させてしまう)では、どうしても赤い軽自動車にぬいぐるみか何かをいっぱい乗せて走っているネエちゃんになってしまいます。また外車でも、ベンツやキャデラックではだめです。ベンツではあぶない筋の女になってしまうし、キャデラックでは颯爽とした感じが出ません。ポルシェでなくてはならなかったのです。
 公共放送だということを楯に、表現の自由の問題に踏み込んでくるNHKにも腹が立ったし、言うことを聞いて歌詞を変更してまで紅白に出たがる山口百恵の所属事務所の姿勢にも不甲斐なさを感じました。(※3)(その当時はうまく言葉にできませんでしたが、その時 感じていた もやもやした不快感を言葉にするとこういうことだったのだと思います。)
 今や紅白歌合戦出場を辞退する歌手は珍しくありませんが、およそ30年前に、天下のNHKの紅白歌合戦を、歌詞のオリジナリティーを守るために辞退するなんて考えられなかったことなのでしょう。でも、もしそのとき、山口百恵がそれを理由に紅白に出なかったら、私は遅ればせながらも、そのときから山口百恵ファンになったかもしれません。また、彼女の人気もそれで上がることはあれ、下がることはなかったのではないかと思います。(※4)

 
ある方から、紅白歌合戦で山口百恵は歌詞どおり「真紅なポルシェ」と歌ったとご指摘を受けました。当時の映像を確認したところご指摘の通りで、赤字部分(※1)は私の事実誤認でした。それにともなって、赤字部分※2、※3、※4も思い違いということになります。
 ただ、山口百恵がいくつかの歌番組で「真紅な車」と歌っていたのは事実であり、そのとき私が「何で歌詞を変えてしまうんだ!」と強い不快感を覚えたのも確かです。その強烈な印象が、長い年月が経つうちに私の記憶の中で紅白歌合戦と混同したようです。
 不正確な記述をしたことをお詫びし、訂正させていただきます。(2010.9.12)

登録商標A                                        2005. 6.25
 文房具類には一般的な名詞だと思われている登録商標が多いようです。一番使われる頻度が高いのはセロテープとマジック(マジックインキ)でしょう。セロテープはニチバン株式会社の登録商標で、一般的な名称はセロハン粘着テープ、マジックインキは寺西化学の登録商標で、一般的な名称は油性マーカーペンと言うそうです。
 さて、セロテープにしろマジックにしろ、一般的な名称があるのですが、登録商標以外に呼び方が見つからないものもあります。クーピーペンシルです。クーピーペンシルはサクラの登録商標で、クーピーはフランス語のCOUP(革命、打撃などの意)からの造語だそうです。色鉛筆の木製部分をなくし、芯だけを太くしたようなあの筆記用具は、幼稚園・小学校で非常に一般的ですが、クーピー以外の呼び方が見つかりません。先日、私の勤める小学校の職員室でクーピーペンシルの呼び方が話題になったのですが、誰もクーピー以外の一般的な名称を知りませんでした。
 登録商標以外に呼び方が見つからないもので、クーピー以上に歴史も長く一般的なものがクレパス(やはりフランス語のクレヨンとパステルからの造語)です。クレパスもサクラの登録商標ですが、あの画材は、それ以外呼びようがありません。大雑把に言えばクレパスもクレヨンの一種なのでしょうが、クレヨンとは区別したいからクレパスと呼ぶわけで、あれをクレヨンと呼ぶことには抵抗があります。
 1970年代に絶大な人気を誇ったフォークグループかぐや姫の1973年のヒット曲「神田川」の2番の歌詞の中にも、クレパスが出てきます。
 
 貴方はもう捨てたのかしら  二十四色のクレパス買って  貴方が描いた私の似顔絵 〜

 かぐや姫は、あまりテレビには出ませんでしたし、紅白歌合戦に出場して歌うこともなかったのですが、聞くところによると、NHKは自局の放送で「神田川」の歌詞をクレジットするときは、やはりクレパスの部分をクレヨンにするそうです。


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