私の勤務する小学校では(市内の小学校どこでも同じだと思いますが)、いま3年生が音楽の時間にリコーダーに取り組んでいます。5月にリコーダーを購入して学習を始めましたが、そろそろ曲らしいものも吹けるようになり、子供たちもおもしろくなってきたころだと思います。
さて、リコーダーの指使いにはバロック式とジャーマン式(イギリス式とドイツ式ともいう)の2種類あることはご存知だと思います。正確に言うと、バロック式の楽器と、ジャーマン式の楽器があり、それぞれ運指が違っているということで、一つの楽器で二通りの指使いがあるわけではありません。つまり楽器を買う時点で、バロック式とジャーマン式のどちらにするか選ばなければならないわけです。
私の学校ではジャーマン式を選びました。もちろん保護者や子供自身にどちらにするか選ばせてもいいわけですが、二つの楽器が混在すると運指の指導に手間がかかり混乱の元なので、どの学校でもどちらかを選んで斡旋することがほとんどです。
楽器を納入した業者さんに「市内ではバロック式とジャーマン式とどのくらいの比率ですか?」と聞いてみたところ、「ほとんどジャーマン式ですね。」と言っていました。調べてみたわけではありませんが、全国的に見てもジャーマン式を採用している割合が圧倒的に高いと思います。ところがこのジャーマン式のリコーダーは、日本の教育音楽以外ではほとんど使われていません。
リコーダーそのものの歴史は古く、バロック時代までは横笛(現在のフルート)よりも一般的でした。しかし、ジャーマン式のリコーダーの歴史は非常に新しく、1920年代にドイツで作られたものです。日本では、1936年のベルリン・オリンピックを機にリコーダーが教育楽器として導入されたようですが、そのときにジャーマン式が採用され、現在に至っています。ところが本国ドイツでは、かのヒットラー・ユーゲントがこのジャーマン式のリコーダーを使っていたこともあってか、現在の採用はごく少数のようです。世界的に見ると、ジャーマン式のリコーダーは全く一般的ではありません。
世界中で日本だけ、しかも小学校の教育音楽の場でしかジャーマン式のリコーダーは使われていないのです。中学校に行くとアルト・リコーダーを使うようになるのですが、こちらは逆にバロック式が一般的で、ジャーマン式はほとんど使われていないという何ともちぐはぐな現状です。
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